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isLog [イズログ]

isLog〜イズログ〜は『日々生きること自体が旅』をモットーに、旅行記やグルメ情報について綴っているブログです。

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ドイツ フランクフルトの風俗アパートの女たちと群れる男の狂気

ドイツ

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古めかしいアパートのひとつひとつの部屋の前に女が立っている。

女は皆下着姿だ。

肌の色も目の色もそれぞれ違う。 前を通るとポージングをして誘ってくる。

僕は今フランクフルトの風俗アパートの中を歩き回っている。 エロスセンター。 直球勝負でそんな名前の建物だ。

足早に歩きながら女を一瞥しては「違う」と次の女に目を向ける。

僕は中国人の女を探していた。

狂った男とのドイツ旅

僕が中国人の女を探していたのには理由があった。

その理由を伝えるには、ある人物に触れなければならない。 その人物、F氏は日本で社長をしていて、酒をおごって頂いたりと良くしてもらった方だった。

そのF氏がドイツを旅行したいと連絡をしてきた。 一緒に行く相手がいなくて、1人では言葉も喋れず不安なので一緒にきてくれないか。 そう誘われたのだ。 交通費とホテル代も出してくれると言う。

お世話になった方ではあるし、費用も出していただけるならと、僕は軽い気持ちでOKした。

後から共通の知り合いに聞くと、この時F氏は日本で親しい友人と事あるごとに喧嘩をするようになり、四面楚歌になっていたという。 また、仕事も危ない事をしていたようで、上手くいかないことが多く当たり散らしていたらしい。

それを知らなかった僕は、ドイツに来たF氏と合流して戸惑った。

F氏は日本で会っていたときの優しい彼とは全く違い、とても攻撃的な面を露わにしていた。

出会ってすぐ、僕がF氏の奥さんにとベルリンより買ってきた土産をゴミ箱に捨てられた。

ドイツのど田舎で「日本食が食いたい。案内しろ。」と言われ、 レストランでは「今すぐドイツの伝統料理が食いたい。伝統料理だとコックに証明させろ。」と強要しだしてウェイトレスを困らせてしまったり(訳していたのは僕だ)、 街中で「俺をビデオカメラで撮れ。後ろ歩きしながら撮れよ。」と僕にカメラを渡し芸能人ぶって歩いたり、 街を歩いていると「このビルができた由来を今すぐ説明しろ。わからなかったら人に聞け。」と無茶振りをしてくる。 ホテルにいても「お前はホテルに泊まるべき人間じゃない!」と毎晩言われた。

四六時中、罵倒された。

一度自分の分の旅費を渡すので帰る旨を伝えたが、「俺をこんなところに置いて行く気か!」と言い出し暴れ出した。

無視して帰ろうと思ったが、パスポートの情報を知られていたので、実家に迷惑がかかることが怖かった。

そんなことを考えてしまうくらい、F氏はイカれていた。

それに、F氏との共通の知り合いには仲の良い人が多かった。 そちらへの影響も恐れ、僕は一週間の旅の最後までいることにしたのだ。

そして最後の旅の地として訪れたフランクフルトにいる時に、

「中国人の女と寝たい。探してこい。」

と言ってきたのだ。

狂気の夜の始まり

僕は1人、夜のフランクフルトの街に出た。 他人が寝る相手を、しかもドイツで中国人を、探しに出たのだ。

F氏は「エロスセンターに行け」とプリントアウトした建物の写真を渡してきた。 エロ狸め。

昼間はただのアパートだが、夜になるとネオンがついて風俗アパートとなるとのことだった。

アパートは古めかしいがネオンがつけられていて淫猥な感じだった。

強制されていなければ入らないであろう、入り口から明らかに危険な感じのする場所だった。

入り口から入って階段をあがっていくと、それぞれの部屋の前に下着姿の女が立っている。 肌の色も目の色もそれぞれ違い、色々な国から集まっているのが伺われた。

女の前を通るとポージングをして誘ってくる。 綺麗な女性ばかりだ。

貧富の差はなお埋まらないと聞く。 金融の中心地であり高層ビルが立ち並ぶフランクフルト。 その中心街から歩いてすぐのところにあるこの風俗エリア。

光と影を考えずにはいられなかった。

僕は足早にアパートの階段をのぼっていく。 僕が探しているのは中国人だ。

だが、2つ程アパートをまわってみたが中国人はおろかアジア人すらいなかった。

僕はホテルに戻り、F氏に状況を伝えた。

他人の買春の交渉

ちゃんと探してきたのかよ

罵りながらもその気になっているF氏はエロスセンターを案内しろと言いだした。 さっさとヤらせて寝よう。 僕はまた同じ場所に行くことになった。

F氏はすらっとした長身のイタリア人と部屋に入っていった。 交渉は全部僕がおこなった。

どこまでやれるのか聞け。あっちの女はいくらだ。

質問やサービス内容の交渉を女性とし、最終的に僕の後ろにいるニヤついた男が相手と聞いて女性は驚いていた。

「終わったら電話するから近くにいろ」 F氏はデレデレした気持ち悪い表情で僕に告げてきた。

その時の顔は忘れられない。 気持ちが悪かった。

汚い欲望が滲み出て隠せない顔。

うんざりしていた僕はアパートを出て待つことにした。

キマった男

アパートを出たが薄暗い中でうごめく風俗を求める男達と、それを商売としているのであろう見るからに危なそうなマフィア連中の中にいてはまったく落ち着かない。

事実、このエリアは治安が悪い事で知られている。

一度駅まで出て、電話がきたら戻ろう。 駅からそのアパートまでは歩いて5分程なのだ。

だが、そう決めて歩き出そうとした僕の肩を誰かが強く押さえて制止した。

振り向くと、明らかにキマってしまっているであろう男がニヤニヤと僕に話しかけてきた。 部屋に入る前のF氏の表情と似てて気持ち悪かった。

顔を近づけて話してくる。 目が血走っている。 声はでかいがろれつがまわっておらず、ドイツ語なのかどうかもわからないくらいだ。 喋るたびに唾が飛んでくる。 酒臭くない。

クスリだな、と思った。

気にせず振り切ろうと思ったが、肩を掴む力が異常に強い。

痛てぇ。

肩を掴む手をどけようとしていると、彼は肩を抑えている手の逆の手でズボンのポケットから何かを出した。

使い途中の注射器だった。

あ、これ、マジでやばいやつじゃん。 咄嗟に身をひるがえして、アパートに飛び込んだ。

アパートに飛び込んだのは階段ならキマっている男くらい振り切れると思ったからだった。

だが、僕の目測は甘かった。 怒号をあげながら男が後から駆け上がってきたのである。

海外の男は屈強なことが多い。 それにさっき肩を掴んでいた手の力を考えると、完全に理性はすっとんでいる。

捕まったら、結構やばいかな、こりゃ。

僕はアパートの階段を無我夢中で駆け上がった。 4階ほどのぼったところで、次の階への階段に女たちが座っていた。

「どいてくれ」と言ったが、セールストークをし始める。 違う。 俺は客じゃない。

そんなことをしているうちに、男が来てしまった。 同じフロアに着いたと同時に男が大声をあげたので、その様子を見て階段に座っていた女たちは部屋に戻ってドアを閉めた。

どうするか。

少しずつ後ずさって考えていると、僕の腕を誰かが掴んだ。

先ほど肩を抑えられたのもあって神経質になっていて驚いたが、腕を掴む手は力強くも優しく感じた。

南アフリカの女

振り向くと、黒人の女性が僕の腕を掴んでいた。 そして、部屋に入れと目で合図してきた。

彼女は僕の前にすっと出ると、男に対して何やら怒鳴りだした。 ドイツ語だったので何を言っているかはわからなかったが、男は彼女に明らかにひるんでいた。

その女性は下着姿だったが、かっぷくが良く、後ろから見ていて頼もしかった。

しばらく怒鳴った後、彼女は男を睨みながら僕を部屋の中にいれてくれた。

「しばらくここにいたほうがいいよ」 彼女は英語で話してくれた。

「ありがとう」 僕が言うと、 「私の客だって言って追っ払ったからもう大丈夫」 と笑っていた。

「30分いくらくらいでやっているの?」 聞いてみると20ユーロだと言うので彼女に手渡した。 そして、通常のサービスはいいから30分ここで話していいかと聞くと、 「私は楽だからそれでもいいわ」 と笑いながら缶ビールを手渡してくれた。

部屋の中はベッドと水洗い場だけがあり、小さなテーブルの上にはローションやコンドームが置かれている。 ここが彼女の職場なのだ。

僕はこの風俗アパートに来てから色々な想いを抱えていた。 このアパートで働いている人はどのような理由でここにたどり着いたのだろう。 アパートをまわりながら、誘ってくる女と嬉々として歩き回る男を見て複雑な気持ちになっていた。

ビールを口に含むと、キマった男に追いかけ回されて緊張していた気持ちもほぐれてきて、僕は彼女にここで働いている理由を尋ねてみることにした。

彼女は南アフリカ出身であり、2児の母親だった。 南アフリカで夫も含めて4人で暮らしていたが、暴動で夫が亡くなってしまい、単身ドイツに出稼ぎにきていた。

明るい人だった。 時々暗い表情も見せたが、基本的には笑っていた。 旦那さんとお子さんの写真も見せてくれた。

クシャクシャになった写真を大切にさすっている姿を見て、母親なんだなと思った。

母親だからこそ、ここで働いているんだ。

表面的なことで一概に人の事を決めつけてはいけない。 他人のことなんて話してみなければわからないものだ。

こんなヤク中の男やマフィアがごろついている中で、下着姿でたくましく生きているのだ。

帰り際、 「また変なやつに追われたらおいで」 と彼女はケラケラ笑いながら言ってくれた。

笑顔がWhoopi Goldbergみたいで素敵だった。

目紛しい夜だったが、思いがけない経験ができた。

そう思ってビルを降りていく途中で事を終えたF氏とばったり出会った。

「なんだ、お前も好きなんじゃねーか」

ビルにまだいた僕を見てニヤニヤしているF氏に、僕は伝えた。

ええ、おかげさまでいい時間を過ごせましたよ