電車のホームで夜を明かす…ドイツの霧がかる町で過ごした長い夜

電車のホームで夜を明かす…ドイツで過ごした長い夜

気温は氷点下近く。
小さくはない駅だったためプラットホームは3つあるが、電車を待つ人は自分の他にはいなかった。

それもそのはず、時間は夜の2時過ぎ。
アパートを借りて住んでいるベルリンでは週末には夜通し電車が動いていたりするドイツだが、今いるのはドイツでも都会からは離れた場所。電車が動いているはずもない。

と、これは今から10年以上前の話。
上記の文章は、当時書いていた手記を元に書いたものだ。

当時、僕はフランクフルトから電車に乗り、アパートを借り住んでいたベルリンへと戻っていたところだった。
しかし、その途中で電車がなくなってしまい、どこかもわからない町の駅のホームで途方にくれることになったのだ。

当時の写真が出てきたこともあり、思い返していたところその時の記憶が蘇ってきた。
写真と共に振り返ってみようと思い、綴ることにした。

電車がなくなり途方にくれる…辛かったが面白い体験

さて、なぜ僕が知らない町の駅のホームで途方にくれることになったか。

フランクフルトに行ったのは、日本で知り合った人から連絡があり、フランクフルト方面への旅行に付き合ってほしいと言われたからだった。

日本では数度会ったことのある知人。
日本で時間を過ごした時には優しくよく笑う人だったのだが、なぜかドイツで迎えたその人は性格が豹変していた。常に怒っている上に、なぜか初っ端から罵詈雑言を浴びせられた。

よくあるような甘い話に飛びついた僕が悪いわけだが、案内してくれれば僕の分の旅費は払うとのことでヒョイヒョイついていったところ、豪華な食費など色々とこちらで支払うことになってしまった。
色々あってそれでも最後までその人との旅は終えたのだが、結果、当時の貧乏な僕はベルリンへの帰路に着く頃にはほぼ無一文になってしまったのだ。

フランクフルトで日本へと帰るその人を見送り、その足で僕はすぐにベルリンへと戻ることにした。ベルリンまでの電車のチケット(ジャーマンレイルパス)が残っていたのだけが幸運だった。
しかし、フランクフルトを出る時には時間はすでに夜を迎えていた。

電車のホームで夜を明かす…ドイツの霧がかる町で過ごした長い夜

結果、フランクフルトとベルリンの間の町で電車がなくなってしまったのだ。
運良く乗り継げば深夜便に乗っていけるかと思ったのだが、一刻も早くフランクフルトを離れたい気持ちから何も調べることなく電車に乗ったことが災いした。

電車が着くと、終電だったからだろう、一緒に電車に乗っていた人たちは町の闇の中へと颯爽と消えていった。
他の電車はないかと調べ終えた時には、プラットホームには僕だけがぽつんと立っているだけだった。

フランクフルトからベルリンへと戻る途中に立ち寄ることになった町

朝方まで電車がなさそう、ということはわかったのだが、さて、それまでの時間どうしたものか。
と言っても、金がないため宿には泊まれない。

宿に泊まれなければ他で時間を過ごすしかない。
そこまでわかってしまえば開き直れる。物音もなくしんと静まっているが、その場で立ちすくんでいるのも退屈なので町を歩いてみることにした。
冬も終わりかけていて昼は春も感じられたが、まだまだ夜は氷点下近く、ホームにずっといても身体が冷えるだけだと思ったのもあった。

電車のホームで夜を明かす…ドイツの霧がかる町で過ごした長い夜

歩き始めると、雨が降ってきた。
誰一人歩いていない静まった町に甘々のアジア人の若造がぽつんと一人。そこに来て、寒いから身体を動かそうと歩いたところでの雨。自虐も含めてもう笑えてきた。

面白い、と思った。
それまでは自分の行いを悔いたりといじいじしていたが、ここまで振り切ってしまえばもうちっぽけなことだ。
その行いの結果、深夜にドイツのこんなどこかもわからない場所で時間を過ごすという体験ができた。面白いほうに転がったと思うことにした。

電車のホームで夜を明かす…ドイツの霧がかる町で過ごした長い夜

町にはドイツの伝統的な建築が並んでいたりと、昼に歩けば綺麗なところだったように思う。

ただ、1時間ほど歩いてみたが、本当に1人も出会うことがなかった。
雨が降ることで霧も出てきて、しかも電灯がセピアっぽい色だったり薄いグリーンだったりと、ちょっと不気味にも感じた。

異世界に入り込んでしまってその世界では町から人が消えている、そんな感じ。映画の中にいるようだった。
または、建物の陰からハットをかぶったロングコートの男が出てきて自分のほうに突然向かってくる……とか、そんなストーリーが頭の中で次々浮かんでくるような、ある意味絶好の雰囲気とロケーションだったと思う。

プラットホームで朝まで過ごす

町を歩き回ってみたが開いている店など一つもなく、全く人に出会わず静かだったことで、むしろ徘徊していたら警察でも呼ばれるのではないかと不安になるくらいだった。

加えて、急に降り出した雨だ。
身体を温めようと始めた散歩だが、結果的に身体を冷やすこととなってしまった。仕方なく僕は駅に戻ることにした。

ドイツでは夜でもプラットホームは基本的に開放されている。

【手記】ジャーマンレイルパスを利用してドイツ各地を巡ったときのコト

他の旅でも、駅で長時間電車を待ったことは何度かある。
大きな駅ではガラスの壁で区切られた待合室がプラットホームにあるのだが、この駅にはプラットフォームに待合所はなく、またプラットフォーム以外に時間を過ごせる場所もなかった。

電車のホームで夜を明かす…ドイツの霧がかる町で過ごした長い夜

ひたすら、プラットホームで電車が来るのを待つ。
旅用に持っていた服を何枚も着込み、ベンチに座って待つことにした。

大きな駅だと他に同じような目的の”仲間”がいたりするものだが、ここでは一人。
最初は写真を撮ったり手記を書いていたが手がかじかんできてしんどくなってくる。最終的には身動きは取らず、妄想の世界に逃げ込んでいた。

辺りがまだ暗い時間、夜からずっと空を見ていたからわかるくらい空がほんのり明るくなった頃、プラットホームにぽつりぽつりと人が現れた。
やがて駅に入ってきた電車に乗り込んだ。覚えているのは、電車の中の温かさ。心底ほっとしたのを覚えている。

ありがちではあるが、ベルリンに着いたときには目的の駅を寝過ごして通り過ぎた。
まあ、そんなことはどうでもいいと思えるような体験をしたあとだったので気にも留めなかったが。

若き日の僕はこうして甘い話には気をつけようと思った。しかし、そういった予想外の出来事に見舞われることで、普段の自分では得ることのできない体験ができるということも間違いないはずだ。

意外とこういった展開は嫌いではなかった。
自分でやろうと思ってすることではないからだ。

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筆者について

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1982年、東京下町生まれ。
高校卒業後、アメリカへ留学。その後、「アートが根付いた国では絵だけで食えるのか」を確認するため、ドイツベルリンにてアート活動をおこなう。

日本に戻ってからは、コーディング・オーサリング・プログラミングなんかを経て、ウェブディレクターを肩書きにしておりました。現在は独立し、ブログやサイトの運用を軸に、ウェブサイトの企画提案からデザイン・構築まで手広く活動しております。何でも屋です。
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